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一つ前へ

 

こわいゆめ


「わあんわあん」
「これからママ、出掛けないといけないから……手、離して」

 いっちゃやだよまま、いいこにしてるからいかないで。

「わあんわあん」
「ちょっと、そんな引っ張らないの……お洋服伸びちゃうでしょ?」

 そんなおしゃれしないでよう、でーとってそんなだいじなの?

「わあんわあん」
「ちゃんとご飯は作ってあるから……お願いだから……」

 ごはんなんてどうでもいいよう、ままにいてほしいんだよう。

「わあんわあん」
「……もう、お願いだから、ママをこれ以上困らせないで!」

 ……わたし、ままをこまらせてたの……?
 


      ・
      ・
      ・
 


「――大丈夫?」

 ままのおようふくつかんでたてが、いつのまにかおねいさんのてをにぎってた。
 ゆめをみてたときがついたけれど、ゆめとおなじくほっぺがぐちょぐちょ、こわかった。

「怖い夢、見ちゃった?」
「……」

 ままにおこられるゆめをみたの、ままをこまらせるゆめをみたの。
 ちゃんといおうとおもったのに、なんだかこえがでてくれないの。

「……?」
「……」

 そおいえばきょう、おねいさんにもおこられたんだ。
 いまはもうやさしいけれど、ほんとはまだまだおこってるのかも、ほんとはわたしにこまってるのかも。

「どうしたの……?」
「……」

 いいこにするから、どっかいかないで。
 いたずらしないから、どっかいかないで。
 
「……黙ってちゃ、お姉さん困っちゃうな」
「……!」

 こまらせるつもりはなかったの、おねがいだから、どっかいかないで。
 ちゃんというから、どっかいかないで。

「……ままを、こまらせるゆめをみたの……」
「困らせる夢?」
「あのね……ままが、どっかいっちゃうの、それをぎゅってしてたら、ままがこまって……」
「ママを、困らせちゃったのが怖いの?」
「わたしがこまらせちゃったから、ままどっかいっちゃったんだとおもう……」
「……」

 さっきまでとまってたのに、またほっぺがぐちょぐちょになってきた。
 ほんとはわんわんなきたいけれど、そしたらおねいさんこまっちゃう。
 こまらせちゃえば、どっかいっちゃう、それがとってもこわかった。
 こわくてこわくてふるえていたら、おねいさんぎゅっとしてくれた。

「……大丈夫だよ」
「おねいさんは、わたしにこまったりとか、していない?」
「ぜ〜んぜん。 寧ろ今は、一緒に居るのがとっても楽しいよ」

 どおしよう、なんだかわんわんなきたくなった。

「絶対、どっか行ったりとかしないから。 大丈夫だよ」

 いまはうれしいきもちなのに、わあんわあんとないちゃった。
 おっきなおっぱいだきついて、わあんわあんとないちゃった。 

 

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