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一つ前へ

たゆんたゆんしない

 

 ぴしゃんごろごろざーざーざー。
 びっくりしちゃっておそとをみたら、きゅうなゆうだちふりだしてきた。
 ぼんぼんまどをたたくあめつぶ、
 でかけたおねいさんだいじょうぶかな――。


『――ガチャ、ガチャガチャ』

 しばらくしたらげんかんから、かぎをあけるものおとがした。
 かえってきたとうれしくなって、わたしはいそいででむかえた。

「おねいさんおかえり」
「ただいま、急に雨に降られちゃって、困ったよ」

 ぜんしんずぶぬれおねいさん、なのになんだかわらっているの。

「ごめん、悪いけど洗面所からバスタオル取ってきてくれる?」
「うん」

 とたとたろうかをはしりながら、おとなはふしぎだなとおもった。
 うれしくないのに、たのしくないのに、なんでえがおになるんだろう。

「はい、もってきた」
「ありがと」

 またまたにこっとおねいさん、きょおはなんだかよくわらう。
 わらってくれるのうれしいけれど、なんだかいつもとちょっとちがう。

「……」
「……ん? どうしたの?」

 いつもいっぱいゆれているのに、おっぱいたゆんたゆんしていなかった。
 ぜんしんごしごしふいていても、おっぱいたゆんたゆんしていなかった。
 それがなんだかとってもきになる、わたしはじっとおねいさんをみていた。

「……」 
「……」

 ずっとだまったままのわたしに、おねいさんのうごきもぴたっととまる。
 ほんのちょっぴりうつむいて、ぼそっとおねいさんはつぶやいた。
 
「……今日ね、おねいさん、彼氏と別れちゃった」

 そうつぶやくとおねいさん、すぐにさっきのえがおにもどった。
 わかれるってかなしいことなのに、なんでえがおになれるんだろう。

「せつないね」
「ううん……まあ、遅かれ早かれこうなるって解ってたしさ、せつなくなんてないよ」

 わらいながらそういったけれど、なんだかしあわせなきもちにみえない。
 たゆんたゆんしないおっぱいを、ずっとみているわたしだった。

 

 

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